大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2565号 判決

被告人 吉原鉄治 外

〔抄 録〕

被告人吉原鉄治の弁護人甲同乙の控訴趣旨について。

第一点 その(一)乃至(三)について。

先づ、原審が原判示第一、(一)において虚偽公文書作成、同行使の事実を認定した点に所論の如き事実誤認の過誤があるか何うかを判断するのに、原判決挙示の証拠によれば、原判示第一(一)の運送契約書は、その作成権限ある農林省千葉木炭事務所長野村修平が兎角書類に盲判を押捺することのあるに乗じ、同人がその情を知らない間に同人をしてこれにその職印を押捺せしめて作成されるに至つたもので、該契約書の内容に相当する運送契約は、この種契約締結の権限を有する右野村修平の意思に基づかないものであることが明らかであるから、これが契約書は全く虚偽の内容を記載した公文書と言わざるを得ない。その他記録を精査するも、原判示第一、(一)の事実については、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認の存するあるを見ないところ、職権をもつて考察するのに、元来、刑法第百五十六条所定の虚偽公文書作成の罪は、公務員がその自ら有する職務に関し行使の目的をもつてその内容が虚偽である文書を作成するによつて成立するものであるから、記録上被告人吉原鉄治等においてその作成の権限を有したことの認め得るに由のない本件においては、本来その作成権限を有する木炭事務所長野村修平において、その内容の虚偽たるの情を知つて該運送契約書を作成したるにおいては、これに加工した被告人等にその身分なしと雖も、刑法第六十五条第一項の定むるところに照らし、右虚偽公文書作成の罪の共犯たるの罪責を免かれ得ないわけであるが、右冐頭説明の如く、該運送契約書は、右野村修平においてその虚偽の内容たるの情を知らずして、その職印を押捺したところに基づいて作成されたものである以上、本来その作成権限なき被告人等において野村修平をして右作成せしめた原判示第一、(一)の所為は行使の目的をもつて公務員の印章を使用して公務員の作るべき文書を偽造したものというべきであるからこれが所為については、刑法第百五十五条所定の公文書偽造の罪の成立するは格別、刑法第百五十六条を適用擬律し得べき限りではない。されば、原審が、被告人等の右所為につき敢て刑法第百五十六条所定の虚偽公文書作成の罪、次いでは、これが行使の罪として同法第百五十八条に問擬したことは、とりもなおさず、法令の適用を誤まりたるに帰し、これが過誤が、判決に影響を及ぼすべきこともまた自づから明らかなところであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。

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